こけもものにおいがする

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心霊写真(ノベリアス参加作)

 「いんようさん」の一件より、少し後の話なんですけどね。
 やっぱり不思議な体験があるんです。
 おかしな写真を撮った話。
 僕はあの心霊写真っていうのがどうも好きじゃなくて、雑誌やテレビで紹介されるときにはたいてい霊能者の珍妙な説明がつくでしょう。
 やれ地縛霊だから危険だの、背後霊だから大事にしなさいだの。
 興醒めじゃありませんか?
 霊能者の言っていることって、僕らには真偽の判定はつかないんですよ。インチキ呼ばわりする気は毛頭ありませんが、「はぁ、そうですか」としか言いようが無い。
 でも心霊写真において、僕らでもわかることが一つだけありますよね。
 「なんだかわからないけど、おかしなものが写っている」ということが。
 これだけは動かしようの無い事実だし、たとえ原因が科学的に説明のつくものだったとしても、おかしなものが写っていることには変わりない。
 僕らは原因だとか目に見えないものに拘りすぎていて、もっと目に見える不思議なことを大事にしてもいいと思うんですよ。


 おっと、話がズレてしまいました。僕の体験談でしたね。
 えーと、場所を言っちゃってもいいのかな。
 雑司ヶ谷霊園ってあるでしょ。池袋からリブロの前を通って高田馬場のほうに少し歩くと。
 ちょうど鬼子母神の裏手あたりですかね。
 あそこで体験した話なんです。

 なんでまた縁もゆかりも無い墓地なんかに行ったかというと、ちょっとした噂を小耳に挟んだからなんですよ。
 そのあたりで写真を撮ると、お墓が写る―─って。
 あ、ちょっと待ってください。墓地で写真を撮ってお墓が写るのは当たり前ですよね。でも、そうじゃないんです。写るのは、画面いっぱいの大きなお墓らしいんです。
 もちろんそこには巨大なお墓なんてありませんし、撮影した人だってそんなもの撮った覚えはない。でも、実際に写ってる。俗に言う心霊写真ってやつです。
 人一倍怖がりなクセに怪談話は大好きですから、「こりゃ放ってはおけない」と食いついたんです。
 僕は学生やりながら文筆の仕事が少しばかりもらえるようになってきた時期だったし、ちょうど飲食店に置くフリーペーパーに雑文を書く依頼があったのでピッタリのネタかな、と思って。
 怪談なんていかにも通俗的だし、そういうの好きな人多いでしょう?



 それで、友達の新米カメラマンを誘いましてね。当時僕は早稲田の近くに住んでましたから、都電で雑司ヶ谷まで行ってみたんです。
 本当のことを言うと撮影なんか僕一人でもまったく問題なかったんだけど、心細かったというのもありました。
 そいつは幽霊とかまったく信じない奴でしたから、同行者として最適なんです。
 都会の真ん中にあるとは言え、墓地ですからね。薄気味悪くないと言ったら嘘になります。
 でも、着いてみたら拍子抜けしました。
 民家だって隣接してるし、完全に生活圏の中にある墓地なんです。
 だからですかね。落ち着いてる感じで、ぜんぜん怖い雰囲気じゃないんですよ。
 「これだったら一人でも充分だったなあ」なんて思ったのを覚えています。
 僕は近所の商店街で通行人を捕まえて、噂話について何か知らないか尋ねてまわりました。
 こういうとき、狙い目はオバちゃんなんです。若い人に声をかけると警戒されちゃうことが多いけど、オバちゃんは噂話大好きですから。
 だいたい二十人くらいに聞いたかなあ。何人か知ってる人が居ましたよ。
 でも、「大きいお墓が写るらしい」っていうことばっかりで、それ以上のことは皆さんご存知ないんですよね。
 実際に心霊写真を撮った人はおろか、見たことがある人も居ない。
 もっとも、怪談なんて概してそんなものなんです。実体なんて無いんだけど、噂ばかり尾ひれがついて広がっていくケースが少なくない。
 こっちは噂話を膨らませて嘘にならない範囲で上手に誇張して書くのが仕事ですから、噂話さえ実際にあるのならそれだけでも構わないんですけどね。
 TV番組だってそうでしょう? 徳川埋蔵金なんて出たこと無いのに何週も引っ張りますし、探検隊シリーズだってジャングルの奥地で珍獣を捕獲できたためしが無い。
 見るほうも、そんなのわかってて見てる。上手に楽しませてくれればいいんです。



 僕がメモを片手に取材している間、友達は墓地の中で写真を撮りまくってました。
 スナップ用のデジカメでいいって言ったんだけど、わざわざ銀塩の一眼レフなんか持ち出してくれてる友達に、嬉しい心遣いだなあと思いました。
 最終形式がデータの場合、銀塩カメラは不向きだと思ってる人も居るけどそんなことはないんです。
 そりゃ、紙焼きした写真を家庭用スキャナでデータ化するならそうですよ? 画質はそれなりのものにしかならないですからね。
 でも、僕らは紙焼きなんかしません。フィルムをラボ(現像所)に渡すときに、一緒にデータ化してもらうんです。たいていのラボには、フィルムスキャナの良いのがありますからね。
 そうやってデータ化すると、たとえスナップ用の銀塩であっても、プロ用デジカメにも匹敵するだけの画素数が得られるんです。
 残念なことに今回の写真は紙面でそんなに大きく使われるわけじゃないから、読者には伝わりませんけどね。
 僕は、まだ写真を撮り続けている友達に声をかけました。
 本職のカメラマンって、とにかくたくさん写すんですよ。たくさん写した中から、良いのを選ぶ。フリーペーパーの写真なんてそんなに気合い入れなくてもいいのにとは思いましたが、友達なりのこだわりもあるんでしょう。
 「こっちは終わったから、ぼちぼち撤収しようかー」
 日も暮れかかる頃だったし、つるんで飲みに行くには良い頃合です。
 そしたらそいつ、カメラを構えたまま「いいけど、飲みに行く前にちょっとつきあってもらってもいいかな」なんて言いだすんです。
 話を聞いたら奴も仕事があって、高層ビルから俯瞰で撮った写真を何点か用意しないといけないらしいんですよ。
 僕は「高層ビルならアレでいいんだよな」とサンシャイン60を指差しました。池袋はすぐ近くですから。
 「そうだなー。でも池袋は夜景があんまりなー」とか言いながら、友達はなにげなくカメラをサンシャインに向けシャッターを切りました。
 「新宿にしようぜ、都庁ならタダで展望台に登れるし」
 サンシャインだって六百円程度だから、たいした額じゃないんですけどね。東京タワーだと一番上まで行くと千四百二十円も取られちゃうけど。
 反対する理由も無いので僕らは新宿まで出て都庁の展望台に登り、写真を撮りました。
 綺麗でしたよ。
 やっぱり、新宿にして良かったと思いました。池袋だとサンシャインの他に高いビルが無いから、そのサンシャインに登って撮影するとなると絵的にメリハリが無かっただろうな、と。
 撮影はすぐに終わったので僕らは歌舞伎町に飲みに行き、その場は何事も無く分かれました。



 あとは自宅で机に向かって行なう作業です。噂話をいかにオドロオドロしく不気味に紹介するか、僕のライターとしての腕の見せ所ってわけです。
 友達の撮った墓地の写真も、恐ろしさを盛り上げるのに一役かってくれるでしょう。
 取材に行って二、三日経って、連絡したんですよ。
 原稿は書き上がってるから、写真を取りに行ってもいいか――って。
 でも、友達の電話での反応がいまいち芳しくないんですよね。曖昧な生返事というか。
 こっちも入稿する期日があるので、「これから行くからな、出かけるなよ!」って念を押して家を出ました。
 奴は神楽坂に住んでるから、近くなんです。
 データなのでネット経由で受け渡しできるんだけど、すごい枚数撮ってましたし、一枚一枚のデータ量が大きいから時間かかるんですよね。待ってるくらいなら直接行ったほうが早い。
 部屋について、挨拶も早々に上がりこみました。
 ちょうどパソコンの画面には、あの時の写真が映っています。
 「なんだ。良い出来じゃないか」「あたり前だろ。俺が失敗すると思ってんのか」なんて軽口を言い合ったりしたんですが、友達の様子がどうもおかしい。
 「どれが良いか選んでくれ」って言うんですよ。
 おかしな話ですよね。データなんだから、その場で選ぶ必要なんか無いんです。
 撮ったデータをごっそりメディアに焼いて渡してもらって、僕は家に帰ってゆっくり選べばいいだけのことなんですよ。
 不審には思ったものの、まあいいやって画面上で写真を見ていきました。いくつか候補を絞りながらね。
 墓地の写真を順番に全部見終えたら、夜景の写真が出てきました。
 こっちも綺麗に撮れてるじゃないか…って言おうとして、はたと思い当たりました。
 この中に、足りない写真がある――と。



 思い出してみてください。
 僕らが墓地を出る前に最後に撮った写真、それはお墓の写真ではないんです。
 友達はサンシャインにレンズを向けてシャッターを切っているから、その写真が無いとおかしい。でも、パソコンの中にはお墓の写真しかない。
 「あの写真どうした? サンシャイン撮ったのがあったろう」
 途端に、友達の顔が強張りました。どうやら図星だったみたいです。
 「…あれは、失敗だったからデータを消した」
 「そうか。それでもいいからちょっと見せてくれ。ラボから渡された元データがあるだろ」
 こういうとき、銀塩カメラは便利ですね。
 奴の反応から見て、写真に「おかしなもの」が写っていたのはまず間違いないんです。
 でも、それを写したのがもしデジカメだとしたら、僕が来る前にデータを消されていたでしょう。
 ラボは銀塩をデータ化したものをメディアに焼いて渡してくれるし、最悪の場合でもフィルムが残るんです。デジカメと違って、物理的なフィルムでは途中にある写真だけ選んで消すようなマネはできません。
 友達はさすがに言い逃れできないと観念したのか、しぶしぶ元データを見せてくれました。
 「いいか、これは失敗だからな。たまたまフィルムが巻かれずに二重写しになっただけだからな。変な憶測はするなよ!」



 元データの中には、消去された一枚が確かに残っていました。
 事情を知らない人が見たら、友達の言うように撮影ミスの二重写しだと思うかもしれません。
 奇妙な、写真でした。
 画面の下のほうは、夜景の一部が写っていました。
 首都高か何かでしょうか。おびただしい数のテールランプが赤い光点として並んでいます。
 そこから上は、普通のサンシャインです。灰色のサンシャイン60が、池袋の空にそそり立っています。
 夜景とサンシャインの境い目は、モヤがかかったように白いものが帯状にたなびいています。
 ただ、それだけの写真でした。
 滅多に起こることではありませんが、カメラの中でフィルムを巻き取るための溝がすっぽ抜けて空回りすることがあるんです。この写真も、そういった原因によって説明がつかないわけではない種類のものでした。
 僕も友達も、写真を見ながらしばらく黙っていました。お互いに、何を思っているかはわかります。
 どう見ても、「大きなお墓」です。
 墓石に供えられたたくさんの線香から、煙が立ち昇っているようにしか見えません。
 なんという薄気味悪さでしょう。
 「…すまん。この写真は使えないな」
 「そうだろう? だから言ったんだ」
 僕は残りのデータをもらって、友達の家を後にしました。

 フリーペーパーの記事が好評だったと聞かされたのは、けっこう後になってからです。
 「夏らしくて良い内容だったよ。欲を言えば、本物の心霊写真が手に入れば良かったんだけどねぇ」
 編集さんは気軽に言ってくれましたが、僕の気持ちは複雑でした。

テーマ:SF(少し不思議)自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/04/11(土) 06:05:50|
  2. 小説・SS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

今回は9.52KB。
それでも書きすぎてるなあ。
  1. 2009/04/11(土) 06:08:25 |
  2. URL |
  3. くろねこ #SFo5/nok
  4. [ 編集 ]

くろねこ様、お疲れ様でした。
リズム感があって非常に読みやすく、面白かったです。
ただ、サンシャインは巣鴨プリズン跡地、というのは心霊や戦後史が好きな人間には有名ですからね。
途中でオチが見えてしまうのがちょっと物足りないと思います。
  1. 2009/04/11(土) 11:50:09 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

書き込みありがとうございます。
語り口は稲川淳二さんの怪談をイメージしながら書きました。
サンシャインを登場させると、勘のいい人は「これは何かあるな」って身構えちゃいますよね。ぬうん。
  1. 2009/04/11(土) 15:40:26 |
  2. URL |
  3. くろねこ #SFo5/nok
  4. [ 編集 ]

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